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【フードコラム Vol.17】便(うんち)の量が少ないのは良いフード?

2021.05.19 HELLO! STUDIES 健康・ケア / その他 / 西宮阪急店 / うめだ阪急店 /

『便(うんち)の量が少ないフードが良いフードなのですか?』

という飼い主さんから質問を受けますが、動物は食べた物を全て消化吸収するのではなく、消化吸収できないものが便となって排泄します。そのため、便が少なくなるのは良い事と一概には言えません。

犬の便は水分が約70%

(人間は約60%)、食物の残渣(食べたもののカスや食物繊維など)が30%弱、腸粘膜の剥がれたものや腸内細菌とその死骸などが数%です。つまり便量は、食物残渣の量というより、水分摂取量で左右します。便が小さくなった場合は、水分不足が考えられます。水分を含まない小さい便は、飼い主さんからすれば処理に困らないという利点がありますが、愛犬にとっては便秘などトラブルを引き起こす危険性が高まりますので注意してください。

30年ぐらい前の栄養学では、

消化できないものは利用価値がなく、不必要といわれていましたが、今日では消化が出来ない食物繊維などは、腸内環境をサポートしたり満腹感を維持したりする効果があるとして、適量であれば健康維持に役立つと考えられています。例えば、トクホ認定の商品にも利用されている「難消化性デキストリン」は消化しにくく、多くは便として排泄されますが、腸内の水分をコントロールし、血糖値や中性脂肪値を調整する働きがあります。

乳酸菌などの善玉菌のエサとなるオリゴ糖もほとんど消化できません

腸内で善玉菌が増えると、免疫力を高め、感染症の予防やビタミンの合成、アレルギーを起こりにくくします(悪玉菌は肉類に含まれるタンパク質やアミノ酸を主なエサにして有害物質を作り出します)。犬は人間と比べ腸が短いため、食物繊維は10%程しか消化できず、残りは便として排泄されます。愛犬の健康を考えると食物繊維の摂取も必要で、当然、便の量も増えてきます。

動物性タンパク質の割合が高く、穀物の割合が少ないフードだけを食べている犬は消化吸収は良く、便の量が少ないです

しかし、こげ茶色や黒っぽい色をしている便が多く、腸内に何かしらのトラブルがある可能性があります。消化率が高いことは、体外に排出すべき毒素を大腸で再吸収させてしまうことになり、アレルギーや消化器系のトラブルのリスクを上げてしまうことになります。栄養バランスのよいフードを食べている犬は、便の色は黄色がかった褐色です。毎日の食事と便の関係はとても重要なのです。

環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン(第2版)」で

犬の平均的な食事の三大栄養素の割合は、タンパク質25%、脂質15%、炭水化物60%となっています。フードの良し悪しは、便の量だけで判断することは出来ませんが、便の量よりも、便の状態を良く観察し、愛犬にあったフードを選ぶことをお勧めします。

食べることは生きること。大切な愛犬の健康は、まず食事からです。

 

2021年5月10日発行 CUUN 5月号の掲載

阪急ハロードッグ フードコンシェルジュ

ペット栄養管理士  坂田 正次