HANKYU Hello DOG HANKYU Hello DOG

【フードコラム Vol.31】人と犬とではカロリー計算が違う?

2022.07.22

最近、愛犬の健康を気にして、ごはんを「手作り食」に変えられる飼い主さんが増えています。

「手作り食」のご相談で「カロリー計算をしているのに痩せてくる」と言うお声が多く、今回はその疑問についてご説明いたしましょう。

そもそも、人と犬では、栄養素の消化率が異なります。

人の場合、栄養素の消化率は、タンパク質が92%、脂肪が95%、炭水化物が97%に対し、犬は、タンパク質が80%、脂肪が90%、炭水化物が85%しか消化できないとされています。そのため食べ物に含まれる代謝エネルギーも人と犬では異なり、人では1グラムあたり、タンパク質4.0kcal、脂質9.0kcal、炭水化物4.0 kcal(アトウォーター係数)ですが、犬では1グラムあたり、タンパク質3.5kcal、脂質8.5kcal、炭水化物3.5kcal(修正アトウォーター係数)と、人と比べて得られるエネルギーが少ないのです。当然ですが人用に計算された食材のカロリーをそのまま利用すると、実は摂取カロリーが足らなくて痩せてしまうことがあります。ペットフードのパッケージに記載されているカロリーは、修正アトウォーター係数でカロリーを算出したものが多いため、ペットフードから手作り食に移行する際は注意が必要です。

食材にどれだけの栄養素やカロリーが含まれているか

文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」にデータベースとして記載され、インターネット上でも見ることができます。例えば、ゆでたササミの場合(肉類/にわとり/【若鶏肉】/ささ身/ゆで)データベースでは、100グラム当たりタンパク質29.6グラム、脂質1.0グラム、炭水化物0グラム、カロリー134kcalと記載されています。これをアトウォーター係数でカロリー計算すると127.4kcal※1となり、データベースに記載されているカロリーと、アトウォーター係数で計算したカロリーと異なります。これは食材ごとに含まれる栄養素や構造が違うため、「日本食品標準成分表」は食材ごとに測定調査を行い、エネルギー換算係数を設定しています。それに対しアトウォーター係数は、エネルギー換算係数を一切無視し、食材に含まれるタンパク質、脂質、炭水化物の量のみで計算をします。そのため、データベースとアトウォーター係数で計算した値とでは数値にズレが出ることがあります。

では、犬の場合はどうでしょう。

残念ながら犬の場合は、「日本食品標準成分表」のようなエネルギー換算係数が設定がため、修正アトウォーター係数以外にそういったデータが存在せず、これがそのまま使われています。先ほどの、ゆでたササミの場合、修正アトウォーター係数では112.1kcal※2となります。

アトウォーター係数や修正アトウォーター係数はあくまでも目安のカロリー計算

大切なのは、体型や体調を見ながら、ごはんの量を調整することです。体重の推移や病気、トラブルのことを考えて、その子にベストだと考えられるごはんの量で与えてください。

食べることは生きることです。

 

※1.ゆでササミのアトウォーター係数のカロリー計算

タンパク質29.6グラム×4.0kcal、脂質1.0グラム×9.0kcal、

炭水化物0グラム×4.0kcal、合計127.4kcal

 

※2.ゆでササミの修正アトウォーター係数のカロリー計算

タンパク質29.6グラム×3.5kcal、脂質1.0グラム×8.5kcal、

炭水化物0グラム×3.5kcal、合計112.1kcal

 

2022年7月10日発行 CUUN 7月号の掲載

阪急ハロードッグ フードコンシェルジュ

ペット栄養管理士  坂田 正次